こんにちは、Switch0923です。年末休みを利用して、「マネーと常識」ジョン・C・ボーグル著を読みました。コストの重要性を示すうえで、名目リターンと実質リターンの内容について書かれていたので、それについて記事にしてみたいと思います。
投資を行う際、リターンを評価する指標としてよく用いられるのが名目リターンです。しかし、名目リターンだけでは資産の実際の価値がどれだけ増えたかを正確に把握することはできません。本記事では、名目リターンから必要経費やインフレ率を差し引いた「実質リターン」の重要性と計算方法について解説します。
実質リターンとは何か?
名目リターン(Nominal Return)は、投資の総リターンを指しますが、インフレやコストは含まれていません。それらを考慮したものが実質リターン(Real Return)であり、資産の実質的な価値の増減を示す指標です。そのため、実質リターンを計算することで、より現実的な投資の成果を評価できます。
実質リターンの計算方法
実質リターンを求めるには、以下のステップで計算を行います。
1. 名目リターンの算出
名目リターンは、投資による配当、値上がり益、利息などを含む総リターンを指します。例えば、株式投資で年間に10%の値上がりがあった場合、その10%が名目リターンです。
2. 必要経費の控除
名目リターンから、投資信託の信託報酬、売買手数料、税金などの必要経費を差し引きます。これにより、名目ネットリターン(Nominal Net Return)が得られます。
計算式: 名目ネットリターン = 名目リターン – 必要経費
3. インフレ率の考慮
名目ネットリターンからインフレ率を差し引き、実質リターンを算出します。インフレ率を考慮することで、資産の実際の価値がどの程度増加したのかが分かります。
厳密な計算式: (1 + 名目ネットリターン) ÷ (1 + インフレ率) – 1
計算例
条件
- 名目リターン:8%
- 必要経費:1%
- インフレ率:2%
計算手順
- 名目ネットリターンの算出
- 8% – 1% = 7%
- 実質リターンの算出
- (1 + 0.07) ÷ (1 + 0.02) – 1
- 1.07 ÷ 1.02 – 1 = 約0.049 → 実質リターンは4.9%
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)での計算
実際の商品を用いて計算してみましょう。
条件(2023年度実績の仮定)
- 名目リターン:6%
- 信託報酬:0.1%
- 売買手数料:0.05%
- インフレ率:2%
計算手順
- 名目ネットリターンの算出
- 6% – (0.1% + 0.05%) = 5.85%
- 実質リターンの算出
- (1 + 0.0585) ÷ (1 + 0.02) – 1
- 1.0585 ÷ 1.02 – 1 = 約0.0377 → 実質リターンは3.77%
この計算により、実際の商品においてインフレ率やコストを考慮した実質的なリターンが明らかになります。
実質リターンを理解する重要性
1. 資産の実際の価値を把握できる
名目リターンだけを見て高い成果だと考えても、インフレ率が高ければその価値は大きく目減りしている可能性があります。実質リターンを計算することで、実際にどれだけ実際の価値が増えたかを評価できます。
2. コスト意識が高まる
投資にはさまざまなコストがかかります。必要経費を差し引いた名目ネットリターンを意識することで、低コストの投資信託やETFを選ぶ重要性を再認識できます。
3. 現実的な目標設定が可能に
実質リターンを基にした資産運用計画を立てることで、インフレや経費を考慮した現実的な目標を設定できます。
実質リターンを高めるためのポイント
1. 投資コストを抑える
信託報酬や売買手数料の低い商品を選ぶことで、名目ネットリターンを向上させることができます。特に、低コストのインデックスファンドやETFはおすすめです。
2. インフレ耐性のある資産に投資
株式や不動産など、インフレに強い資産を組み入れることで、インフレ率を上回るリターンを得る可能性が高まります。
3. 分散投資を心がける
分散投資を行うことで、リスクを抑えつつ安定的なリターンを目指せます。特にインフレ率が高い時期には、異なる資産クラスを組み合わせることが効果的です。
まとめ
投資の成果を正しく評価するためには、名目リターンだけでなく、必要経費やインフレ率を考慮した実質リターンを把握することが重要です。実質リターンを理解し、計算することで、資産の実際の価値を正確に評価し、より現実的で効果的な資産運用計画を立てることができます。インフレやコストに目を向けつつ、長期的な視点で賢い投資を心がけましょう。